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お知らせ

2022/12/9

国内4海域に来遊するザトウクジラの集団構造を解明!3,532頭分の写真を相互に照合

ザトウクジラ(Megaptera novaeangliae)は、夏季は高緯度海域で摂餌を行い、冬季に低緯度海域で繁殖(交尾、出産、子育て)をすることがわかっており、西部北太平洋海域では、ロシア周辺が摂餌海域、沖縄、奄美、小笠原、フィリピン、マリアナ諸島周辺が繁殖海域、北海道等が回遊途中海域として知られています。

しかし、国内のザトウクジラ来遊海域間の交流や関係性については未だ不明な点が多く残されています。

1989~2020年に国内4海域(沖縄、小笠原、奄美、北海道)で撮影されたザトウクジラ3,532頭分の尾びれ写真を自動照合システムを用いて相互に照合した結果、沖縄-北海道間で3頭、沖縄-小笠原間で225頭、沖縄-奄美間で222頭、小笠原-奄美間で36頭の一致個体が見つかりました。

これらの一致個体頭数を基に、海域間の交流指数や各海域の回帰指数を算出したところ、国内4海域は、1つの共通の集団によって利用されていることが判明しました。また、海域間によって交流頻度は異なり、フィリピン海の太平洋側(小笠原からマリアナ諸島)と東シナ海側(奄美、沖縄、フィリピン)をより頻繁に利用する2つの小グループが存在する可能性が示唆されました。

本研究は、日本周辺のザトウクジラの保全に向け、大変貴重な発見であり、観光産業において今後も重要な位置を占めるザトウクジラの資源管理や保全活動に役立つと考えられます。

本研究成果は、2022年11月17日付で学術誌『PLOS ONE』に掲載されました。

〇本研究のポイント

・ザトウクジラは、尾びれ腹側の特徴を用いて個体を識別することができる。

・国内4海域(沖縄、小笠原、奄美、北海道)で撮影されたザトウクジラ3,532頭分の尾びれ写真を、自動照合システムを用いて、海域間で照合したところ、海域間に複数の同一個体が発見され、国内4海域は、1つの共通の集団によって利用(交流)されていることが判明した。

・交流頻度には、海域間で差があること、また各海域にある程度の固執性があることから、集団の中に2つ以上の小グループが存在する可能性が示唆された。

・本研究は、絶滅危惧集団とされている日本国内のザトウクジラの保全に向け大変重要な発見である。

〇発表論文

【雑誌名】
・PLOS ONE(2022年11月17日)

【著者名】
・小林希実*, **、岡部晴菜*, **、東 直人**、尾澤幸恵*、内田詮三**一般財団法人沖縄美ら島財団、**沖縄美ら海水族館)
・近藤理美、小川竜太(認定NPO法人エバーラスティングネイチャー)
・辻井浩希、岡本亮介(一般社団法人小笠原ホールウォッチング協会)
・興 克樹(奄美クジラ・イルカ協会)
・日田雅美、吉川隆士、李 天鎬(大阪大学サイバーメディアセンター)
・三谷曜子(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)

【タイトル】
・Interchanges and movements of humpback whales in Japanese waters: Okinawa, Ogasawara, Amami, and Hokkaido, using an automated matching system

【URL】
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0277761

〇関連リンク

一般財団法人沖縄美ら島財団プレスリリース
https://churashima.okinawa/pressrelease/1670561490/


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